<韓国:生命科学>韓国研究チーム、躁うつ病のメカニズム解明
浦項(ポハン)工科大学のキム・ジョンフン教授と蔚山(ウルサン)科学技術院のソ・パンギル教授の研究チームが、PLCγ1タンパク質が躁うつ病の発症に関与している事実と、そのメカニズムを解明しました。
PLCγ1は、神経細胞からの様々な信号伝達経路を媒介するタンパク質として知られており、脳で多く発現されます。
複数の脳疾患で異常なPLCγ1の発現や活性が確認されており、特に気分のむらの誘発との関連性がある遺伝子として報告されています。
研究チームは、前脳の興奮性神経細胞でPLCγ1が欠乏した実験用ラットを作り、その行動分析を行った結果、活動・食欲・喜びの活動が過度に高く、記憶と学習能力が落ち、躁状態の異常行動を示すことを確認しました。
また、PLCγ1が欠乏した興奮性神経細胞は、脳由来の神経栄養因子(BDNF)の信号を適切に伝達していませんでした。
これによって、下位信号伝達体系の細胞内カルシウムの調節異常を起こし、抑制性シナプスの形成に影響を与えるという事実を確認しました。
今回の研究によって、PLCγ1の欠乏が、興奮・抑制性シナプスの神経伝達不均衡とシナプス可塑性の調節異常を誘発することが明らかとなりました。
ソ・パンギル教授は「今回の研究成果は、遺伝子操作マウス作りから表現型分析まで約10年間の成果」とし、「その中で、明らかになっていなかった躁うつ病の病因メカニズムとして、PLCγ1の役割を(マウス)個体レベルで検証し、そのメカニズムを明らかにしたもので、今後、躁うつ病の研究と治療法の開発に貢献することが期待される」と述べています。
躁うつ病(Bipolar disorder)は、外的刺激や状況に関係なく、自身の内的要因で、気分が落ち込んたり高揚したりする状態が持続的に繰り返される気分障害を指します。
(出所:韓国・アジア経済、2017年2月9日付け内容)
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